なずなのささやき

いろいろ雑多なオタクのささやき

限界オフ会

いわゆる「オフ会」のような、インターネットで知り合った方と会うのは初めての経験だった。そもそもインターネットで知り合う、という経験すら初めてのような気がする。基本的にSNSでやりとりをするのはリアル友人かその友人か、何かでつながりのある顔見知りしかいない。私は人見知りなのだ。

そんなシャイガールに、界隈の友人たちとのご縁を作ってくれたのが「縁がわ男子とけものたん」というゲームだった。乙女ゲームによくある沢山のイケメンに囲まれるシチュエーションではなく、縁側で、ただ一人の男子とけものタソと過ごす日々を体感できる、ゲームというよりもはや居場所だ。

宣伝を打ちまくるようなビッグタイトルでも、長く続くシリーズ物でも、突然の爆発的ヒットでもなく、それこそタイトル通り「縁側」の様なヌクモリティ溢れる、温度を感じられるこの親愛アドベンチャーを、友人たちはそれぞれがそれぞれに満喫していた。

私も思いっきり満喫して救われた中の一人だ。だから界隈のツイートをイイネしたり盗み見たりしてはそのパッションを勝手に浴びてひっそり過ごしていたものの、ついにスマホ片手にうんうん頷くだけでは耐えられなくなり界隈に話しかけてしまう事態になった。

数日悩んだけど思い切ってコメントして良かったと本当に思う。あの日勇気を出した人見知りの私を全力で褒めたい。1歩踏み出してみれば、それこそ縁側のような環境がそこにはあったのだから。

少しずつ輪が広がり、界隈が毎日のようにお気持ちを叫び散らかしているツイッターのTLが心地良くなって来た頃、インターネット老人には怖くて触れなかったラジオ的な機能を使う友人がいた。シャイガールゆえ、まさかそれに自分も参加するなんて思ってもみなかったが、文字だけじゃなく声や話し方を聞いて「良い人」だと確信が出来た。この界隈には良い人が集まっている。

「えんだん」の話から始まりその他諸々の話の隙間にチラリと混ざる雑談で友人たちの住まう地域を知ったが、日本だけでなく外国にいる勢とも繋がっている事実に老人は驚きを隠せなかった。インターネットすげぇぜ、と。

 

ネット上で何度も集まるうちに、いつかオフ会をしたいね、と言う話題が上がるようになった。マジで直接お会い出来るなら片道何時間くらいあれば良いかなとか考えていたが、今思えばこの時点でシャイガールはとうに姿を消しクレイジーBBAが顔を出していたに違いない。私にとって界隈の友人たちは親戚のような感覚になっている。

とはいえ実際は住まいや環境がバラバラで、オフ会を実現するにはもう少し調整の時間がかかるだろうし気長に、と思っていたところで突然チャンスが巡ってきた。

 

降って湧いた、とはこのことだった。

友人の一人、めいさん(仮)がえんだんのイベントに参加するので都に来るというのだ。そこは我が地元の飛び地と言っても差し支えないところで、特急なら20分という好立地だった。たまたま、ほんとうにたまたま仕事も半ドンという奇跡が重なって私は喜び勇んで邂逅準備を進めたのだった。

 

当日、人混みの中で見つけてもらう気満々だった私はせめて目立つようにと狂った色のパーカーを装備していた。ショッキングピンク。よく考えたら普段着やんけ。しかもこの都ではそれほどレアな色でもない。これはやはり当初の予定通りバラを一輪持っておくべきだったかと対策を考えていたら「なずなさんですか?」と耳に優しい声が私を呼んだ。

乙女のためのイベントでえんだんのノベルティ配布があるからと、先に現場に寄ったはずのめいさんは、戦場に出向いてきたとは思えない清らかさで待ち合わせ場所に現れた。あれだけ御自身をブタゴリラ的に言っていたがそのお姿はお姉様の雰囲気だった。きっといい匂いがする。もっと近づいておけば良かった。

 

めいさんはめいさんだった。

ご尊顔を拝するのは初めてでも、ネット上で何時間も話せる友人だ。良い人なのはわかっていた。だけど実物は認識していたよりずっとずっと気配り上手でノリが良くて良く笑い感情豊かで、やっぱり耳は腐っていた。安心した。おかげで私の中のシャイガールは一度も顔を出すことなく、私も脳を腐らせたまま過ごすことができた。直接会うって大事だな、と実感しながら当初の目的通りマリオンクレープを食べに向かうのだった。

都は我が地元の飛び地、などと言いつつ私は全く詳しくない。なので今回はまるまるめいさんに頼りっきりだった。クレープ屋さんの場所もカラオケ屋の選定も予約もまるっとだ。私がしたことといえばカラオケ屋のエレベーターのボタンを押したくらいなものだった。感謝のダンスくらい踊っておくべきだったかと猛省している。

年代が近いのもあってカラオケの選曲がいちいち胸に刺さった。懐かしさの連鎖で選曲が進む。これはカラオケの終了コールのたびに「延長で」と言っていた時代の感覚だった。終了前になると歌いたい曲を思い出すアレだ。

 

めいさんは普通に歌が上手い。

そして声域が少し高めでかわいい。その声でWhite Loveとか歌っちゃうの反則じゃない?今回うろおぼえすぎたのて次回はちゃんとヒトエちゃんのとこ歌いますね。

カラオケ後半はうたプリ攻めだった。最高。最高。これこれ、これだよ!

一人で歌うことはあってもユニット曲をパート分けして歌うなんてしたことがなかったので初めは少しだけ困惑したものの、だんだんやり方がわかるとあれもこれもと思いつく。ただBBAは曲とタイトルが一致しない病を抱えているので選曲に時間がかかりがちだった。それでもプロのプリンセスめいさんのおかげでどんな曲も対応したり鼻歌だったり時々発狂したりと何も気を張らなくていい素晴らしい時間を過ごすことができた。

フリータイムで入ったはずなのにすぐに終わりの時間はやってきた。さては時空歪んでんな?と名残惜しさ全開で現場をあとにし駅に向かう。

めいさんも地元に帰るのに、わざわざ帰り道と違う私の路線の改札まで一緒に来てくれた。電車関係迷子上等なので正直ありがたかった。こういう気遣いはネット上だけだと知ることができない。私の初めてのオフ会は本当に最of高だった。次回は「オフ会」と名前をつけずにただ「磯野~、遊ぼうぜ~」と気軽に遊びに行きたいと思う。

 

そしてカラオケのパート分けハモリをガチで復習することを心に誓った帰りの特急は、1両目の最前列の席だったので、ガラスに映ったニマニマした自分の姿をずっと見続けることになったのだった。